ランス美術館
《金治の聖母(習作)》1959年12月14日
《聖母(習作)》 1960年 3月21日
1959年10月14日、フジタは妻の君代とともに、ランス大聖堂でカトリックの洗礼を受け、レオナールの洗礼名を授かりました。それからちょうど、2か月後に描かれたのが、左の《金地の聖母(習作)》です。その翌年の3月には、イエスを抱くマリアの姿を再考し、その側に少女の姿を描き込んだ《聖母(習作)》を完成させます。聖母マリアは穏やかな表情を浮かべ、膝に抱かれた幼子には、あどけなさの中にも凜とした佇まいが感じられます。このデッサンをもとにフジタが描いた油彩画が、軽井沢安東美術館が所蔵する《金地の聖母》です。
ランス美術館蔵
Madone, fond doré (étude) Musée des Beaux-Arts de Reims
Photo by Corentin Le Goff
ランス美術館蔵
Madone, fond doré (étude) Musée des Beaux-Arts de Reims
Photo by Corentin Le Goff
現在開催中の「ランス美術館コレクション 藤田嗣治からレオナール・フジタへ 祈りへの道」は、フジタ作品を多数所蔵するランス美術館と軽井沢安東美術館の共同企画だからこそ実現した一期一会の展覧会です。《金地の聖母》の下絵と油彩画が出合い並んで展示されるのは、なんと世界初です。フジタはこれらの習作からどのような油彩画を完成させたのでしょうか。
軽井沢安東美術館
藤田嗣治《金地の聖母》1960年
フジタは人物像の背景に十字と円形を組み合わせたキリスト教美術の装飾模様を配しました。これは、前年にフジタが制作し、ランス大聖堂へ献納した《聖母子》(1959年10月14日 ランス大聖堂所蔵 /ランス美術館寄託)にも描かれた意匠で、本展でご覧いただけます。中世やルネサンス期のキリスト教美術にならって、フジタは金箔や自然のモチーフを背景として用いていますが、そこに描き込んだ十字と円形の装飾は独創的です。ここからは、自身の表現を追い求めたフジタならではの聖母子像が感じられます。
© Fondation Foujita / ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2025 B0929
ランス美術館について
フランス北東部、シャンパーニュ地方の街ランスに位置するランス美術館の起源は1748年に創設されたデッサン学校に遡ります。1752年、校長アントワーヌ・フェラン・ド・モンテロンが自身のコレクションを市に寄贈、19世紀から20世紀にかけては国家からの作品寄託やシャンパーニュ地方のコレクターによる寄贈を通じて、所蔵品は充実していきました。そして1913年、ノートルダム大聖堂に隣接する旧サン=ドニ修道院を新たな拠点として開館します。 ランス美術館は16世紀から20世紀にいたる作品を幅広く所蔵し、なかでも19世紀のフランス美術ほか、20世紀の画家たちの作品が充実しています。そして同館は、君代とその遺族から寄贈された約2,300点を超える藤田の作品と資料を所蔵する美術館でもあります。2019年9月からは全面改修と拡張工事のため一般公開を一時休止し、2027年のリニューアルオープンに向けて準備を進めています。新しい美術館では、藤田コレクションを展示する約210㎡の専用スペースが設けられる予定です。
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