フジタがカトリックの洗礼を受けたランス大聖堂

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フランス北東部、シャンパーニュ地方の中心都市ランスは、歴史・芸術・文化が息づく町です。中央にそびえる13世紀建立のランス大聖堂は、数世紀にわたりフランス国王の戴冠式が執り行われてきた場で、荘厳なステンドグラスが光を受けて輝く姿は訪れる人々を魅了します。約200年に及ぶ建設の末に完成したこの大聖堂はフランス北部ゴシック建築の傑作と称され、ユネスコ世界遺産に登録されています。20世紀にはシャガールによるステンドグラスも加わり、長い歴史の中に現代芸術の息吹が調和しています。

画像:©Ville de Reims , ©AD GrandReims

そしてこのランス大聖堂こそ、フジタがカトリックの洗礼を受けた場所でした。1959年10月14日、フジタはこの場所で、敬愛するレオナルド・ダ・ヴィンチにちなんだ洗礼名を授かり、レオナール・フジタとなるのです。軽井沢で初公開となる≪聖母子≫は、フジタが感謝の意を込めてランス大聖堂へ献納した貴重な作品。幼子イエスを胸に抱き、穏やかな表情を浮かべるマリアを、愛らしい4人の天使が囲んでいます。ここにフジタは洗礼日と「レオナール・フジタ」の名を記しました。新たな人生の扉を開こうとするフジタの心意気が感じられる作品です。

作品画像:《聖母子》1959年 インク・墨(淡彩)、金箔、油彩・キャンバス ランス大聖堂蔵 ランス美術館寄託

Vierge à l’Enfant (1959), Encre, lavis d'encre, feuille d'or et huile sur toile Don de Léonard Foujita à la Cathédrale de Reims en 1959 Dépôt de l’association diocésaine de Reims Reims, Musée des Beaux-Arts / photo : Corentin Le Goff